何気なく毎日頭上にポカッと浮かんでいる月。一番身近な星でありながら、実は多くの謎を秘めた神秘の星でもある。まず、知られているデータとして、月の赤道半径は1738kmで地球の約4分の1。これは、大きさという観点から見ると、太陽系の他の惑星に対する衛星の大きさの比率は平均して10万分の1であるのに対し、地球に対する月の大きさの比率をみると約80分の1と桁違いに大きいことが分かる。また、月のおかげで地球に生命が誕生した、ともいわれている。月が存在する以前、地球の地軸は安定せず、グラグラと揺れながら自転していたと考えられているが、月のおかげで、お互いの引力によって、その軸のぐらつきがなくなり、自転は安定した、という話だ。月の引力が引き起こす潮の満ち引きも、これによる干満の差があることで、海岸に干潟が生まれ、そこで緩やかに生命が発生できたと考えられている。
その月の起源だが、これはいまだに謎だ。主な起源説は5つ6つあるが、どれも確定的証拠なり、不自然な要素なりがあることで、これが正しい、と言いきれるモノではない。
第一に、捕獲説。月は、実は宇宙の何処からかやってきて、それがたまたま地球の衛星軌道に捕獲された、という説。例えば、火星の衛星であるフォボスやダイモスはこれではないかといわれている。また、土星や木星の外側を回る衛星たちも、何処かよそからやってきた小惑星が、そのまま木星や土星の重力によって衛星軌道に落ち着いたのではないかとされている。第二に、沈殿説。月は、地球のマントルから蒸発したガス雲が宇宙空間で冷やされ、地球の衛星軌道上で沈殿した、という説。これはかなり特異な説だが、可能性はゼロではなさそうだ。第三に、分裂説。月は、地球の一部が飛び出して、そのまま衛星となった、という説。これには、地球の近隣を巨大天体が横切るとか、地球上で尋常でない火山活動が起こる、などのきっかけが必要だ。第四に、双子集積説。月は、地球とほぼ同時期に地球の兄弟惑星として誕生したが、その大きさの差から、月は地球の衛星となった、という説。その大きさの比率からして、これは大いに考えられる話。
そして、最近有名になり、最も有力であろうとされているのが”衝突放出説”である。月は、地球外の天体が地球に衝突し、地球の一部をえぐり取ってそのまま宇宙空間に放出され、その残骸が地球の衛星軌道で固まった、という説。これは、別名「ジャイアントインパクト」説ともいう。事実、アポロ計画で地球に持ち帰られた月の岩石は、地球のマントルに存在するものに一致しているし、その他様々な状況証拠も、この説を支持している。ただ、この説も仮説である。
古来から、人類は月に魅せられてきた。それは、一番大きく目立つ星であるということは当然ながら、何か不思議な力を秘めた存在でもあるかもしれない。日本の古書を紐解いてみても、月に関するくだりが多く見受けられる。そして、等しくそれは美しいものの対象とされてる。